このごろのこと

□相変わらず滞りっぱなしの日記です。
□さて、7月3日から昨日8日まで、おもに札幌方面にでかけ、いくつかの仕事をしてきました。
【7月3日(土)】
□知人Hさんの紹介で花作家・森直子さんと会う。
□以前よりHさんからは「小寺さんと森さんを引き合わせたいんだ」と聞いていたのだけれど、最近になって不思議な偶然がいくつも重なり、この日ついに直接お会いすることができた。
□じつは、翌4日に小寺が登場したSTVのドキュメンタリー番組「D!アンビシャス」のちょうど1週前の主人公は、この森直子さんだった。
□番組では、生け花教室を主宰する傍ら子どもたちに生け花を通して”いのち”を考えるきっかけを提供する「花育」に力を注がれている森さんの日々の活動が紹介されていた。
□そのオンエア映像をみて驚いたのは、子どもたちとのふれあいの中で森さんが喋ることばのいくつもが、いつも僕が写真絵本づくりワークショップで発していることばと全く同じだったこと。大事に押さえたいツボの部分がじつにぴたりと共通していて、びっくり。
□食事をご一緒しながら、そうした話を切り口に、お互いの活動のことや、花や写真と向き合う心持ちのこと、子どもたちとのふれあいのことなど、あれこれ楽しい話に興じた夕べとなった。
□じつはこの夜、札幌在住のイラストレーター増田寿志さんも途中までご一緒していたのだけれど、締め切り間近の大仕事を抱えているとのことで、残念ながらゆっくりお話しすることは叶わなかった。
□花と写真とイラストと、それぞれあらわしかたの方法は違えども、世界の美しさを抽出しようとする者同士、ゆっくり意見交換をしたいものだ。
【7月4日(日)】
□39回目の誕生日は、小樽で迎えた。
□この日は小樽の「たんぽぽ文庫」さん主催のデジカメ写真絵本づくりワークショップ。「今日はSTVの番組の放送日だなぁ…どんな番組になったのだろう…」などと思いながら、会場となる長橋なえぼ公園へ。
□心配されてた天候も、撮影を行った午前中はよい天気に恵まれ、子どもたちとともに写真絵本づくりを心ゆくまで楽しんだ。
□毎度のことだけれど、今回も傑作が続出。
□撮る本人の心持ちと被写体とのマッチング、その純度と深度さえ確かなものであれば、小手先の技術の拙さなど屁でもないのだ、ということを、毎回毎回子どもたちの写真から教えられる。
□そして、子どもたちの中に蓄えられたことばの輝きに触れられるのもこのワークショップの醍醐味の一つ。
□今回も本当に素敵なワークショップになった。
【7月5日(月)】
□午前中、札幌市白石区と地元の読み聞かせボランティアサークル「すてっぷ」さん主催の「しろいし絵本講演会」でスライド上映講演。
□今回は子育て世代の大人や、読み聞かせ等に関わる子育て支援者などが対象。拙著2冊の読み語りと、それらをどんな思いで制作したのかについての講話をした。
□北海道らしからぬ蒸し暑さの中駆けつけて下さり、じっくりとご聴講くださった参加者のみなさんに、感謝。
【7月6日(火)】
□豊浦町へ移動し、町内の小規模小学校の合同学習として、デジカメ写真絵本づくりワークショップをおこなった。
□会場は、豊浦町立大和小学校。この学校にはじつにすてきな「学校林」がある。トドマツ、ハルニレ、オニグルミなどが混成した林のなかで、子どもたちと「身近ないのち」を探してしばし散策。
□小学校1年生から最上級6年生まで、思い思いの被写体を見付けては写真を撮り、絵本を紡いだ。
□信じられないくらい写真センスが良い男の子、巧みなハサミさばきの切り絵で見事な表紙を作り上げた2年生の女の子。それぞれの個性が、素敵な写真絵本を生み出した。
□夕方は札幌に戻り、以前勤務していた学習塾へ。子どもたち授業風景をスナップ撮影した後は、授業後、塾長のKさんはじめ職員のみなさんと楽しい会食を。
□札幌を離れて10年以上たつけれど、いつも変わらず迎え入れてくれる皆さんの心遣いがとても嬉しい。
□会食終了後もKさんと二人きり、車の中で缶コーヒーをすすりながらしばし雑談する。
□塾経営を通して自己を生きてきたKさんだが、そのなかでいつでも「仲間たち」や「関わりをもった人たち」との繋がりを意識し、それをこそ”財産”と捉えるKさんの人生観にはいつも感銘を受ける。
□Kさんの塾に勤めていたときから僕は、学習塾が子どもたちの中に育むべきものは何か、育み得るものは何か、としばしば考え、自問自答してきた。
□多分それは、第一義的には「ある直近の目標を乗り越えるための、数値化可能な”学力”という名の能力」なのだろうと思う。
□でも、Kさんがその”向こうに側”に見据えているものは、むしろもっととらえどころのない、けれども、人の人生をより確かにかつダイナミックに導き得る「人と人の間で生きてゆくための底力=人間の力」なのかもしれないなぁ、と思う。
【7月7日(水)】
□白石区の絵本読み聞かせボランティアグループ代表Tさんの紹介で、札幌市内の「フリースクール札幌自由が丘学園」へ。Tさんが毎週担当している「読み聞かせ授業」の特別編として、スライド上映講演をおこなう。
□在校生10数名、職員数名の方々に、森の写真のスライド上映と拙著の読み語りを楽しんでもらった。
□公立やいわゆる私立の中学・高校ではなく、自分の個性や思いに適した学びの環境をもとめてこの「フリースクール」に通う生徒さんたち。
□日本のいわゆる「公教育」については、僕は日頃からいろいろ考えいていることがあるけれど、こうしたフリースクールのような”学び(もしくは居場所)の選択肢”が子どもたちの前に提示されることは、大大大賛成だ。
□実際、この学校の生徒さんたちが互いの個性を尊重しながらのびのびとした雰囲気の中で学習している様子をみて「ああ、こういう環境はとてもいいなぁ」と感心した。
□もちろん、この学校に通うことを選んだ理由や経緯は個々それぞれあって、中には、必ずしも積極的な判断でこの場を選んだわけではない生徒さんもいるかもしれない。
□また一方で、こうした「フリースクール」という、いわば”非公(ひ・おおやけ)”の教育現場が内外に抱える様々な課題がさぞや多かろうことは、想像に難くない。
□僕のような部外者が軽々かつ安易に”フリースクール礼賛”を唱えるのは、もしかしたら現場の方々には失礼なことなのかもしれない。
□しかし、そうは思いつつも、僕は常々、こどもたちの「居場所」や「学びと育ちの現場」というものが、もっともっと自由に、当事者たちに過分なストレス無く、多様な選択肢の中から選択することができても良いのではないか、と考えている。
□どうもいまの世の中、教育ということに限らず、子どもも大人も、様々な局面において「選択肢」が少なすぎるように思えてならない。
□人の生活の中に流れこんでくる情報は、もはや無尽蔵と言ってもよくらいに多い。それらの情報にアクセスする方法も多い。
□しかし、それらの多様な方法を経てアクセスした多様な情報が実際に人々を導びかんとする「行く先」自体は、さて一体どれくらい多様性に富んでいるだろう。
□「勝ち組、負け組」をいうことばを例に挙げるまでもなく、いま、ひとが生きる上での価値判断基準が、完全な二極化とは言わないまでも、あまりにも柔軟性に欠けてはいないだろうか、と思うのだ。
□世の中、もっとあれこれ「やり方」や「道」があっていい。
□7月に入ってからは、駅前や街頭、またテレビの中で「いちばん!」なんていうことばが賑やかに連呼されている。
□いままで「これでヨシ!」と信じてきたやり方や行き詰まり、成功間違いなし、と信じて歩んできた道が足元でガラガラと崩れ始めたのを知ったとき、「ナニクソもう一度!」と、一気呵成に集団的価値観の再統一を図りたくなる気持ちは、僕にも分からなくもない。
□けれど、こういう声が高くなるときにこそ、その一方で「わたしに関わるものごとの順番や価値、やり方は、わたしがわたしの責任において自分で決めますから」と、誰もが胸を張って主張できるような環境が人々の前にちゃんと準備されて欲しいと思う。
□人という生き物やそれが織りなす社会は、本来的には、強力なリーダーシップや拘束力、絶対的な規範や集団帰属意識に依らずとも、遠い歴史や身近な歴史の中にちょっとした先例や雛形さえ見いだせれば、その時々の世を自分の感性と身体でしっかり生き抜くことができるだけの柔軟さと底力を備えているはずだと僕は信じている。
□人間は互いに、もっと信頼し合ってよい。特に子どもたちこそは、十分信頼に足るだけの「ちゃんと生きていく力」を自ずと備えているはずだ(もしくは、その力にヤミクモに封印をしていないはずだ)。
□話がフリースクールからだいぶ横道にそれてしまった…。
□でも、やはり僕は言いたい。
□人という生き物への信頼の上に、特に子どもたちへの信頼の上に、より柔らかで優しい世界を。
【7月8日(木)】
□札幌滞在最終日は、厚別区子育て支援係主催の講演会。おもな対象は、子育て世代の若いおかあさん方。
□白石区での講演と同様に、森の写真と拙著読み語り、そして著作に込めた思いの紹介をさせていただいた。
□開場時刻直前に突如降り出した土砂降りの雨。ベビーカーのお母さんにはとても気の毒な天気の急変でしたが、それでも、開演時刻にはたくさんの参加者が。
□その中に、1年以上あっていなかった知人の姿が。昨年結婚したという知らせは受けていたのだけれど、久々にあった彼女のお腹に8ヶ月の赤ちゃんが育っていて、びっくり!お願いして、ぽっこりと膨らんだお腹をなでなでさせてもらった。おーい、元気に生まれておいでね。
□講演のあと、何人かの方々が声をかけてくれた。
□「こういうイベントで託児をするのが初めてでした。講演の開始直後は、託児部屋に預けてきた子どものことが気になったけど、でも、しばらくしたらすっかり森の世界に引き込まれて気にならなくなっちゃいました!」と笑う若いおかあさん。
□「4日にSTVの小寺さんの番組を偶然見て、ネットで検索して今日講演があることを知り、急遽参加しました」という、手稲区の保育園の園長先生。テレビで紹介されたデジカメ写真絵本づくりの様子を見て「うちの子どもたちにもああいう体験をさせてあげられないかと思って…」と声をかけて下さった。いつか実現するといいな。
□片付けを終わらせた後は、主催して下さった子育て支援係の皆さんと昼食。梅おろし冷やしうどんをつるつるっと。美味しかった。
□そのあとは、今回の講演を厚別区に打診してくれた前述の読み聞かせボランティアグループのTさんと二人で、喫茶店であれこれ談笑。
□Tさんが10年来温めてきた一つのアイデアを聞かされ、僕も「それはぜひぜひ実現を!」と賛同。
□動こうと思った人が、とにかく動き出すこと。その大切さを知るTさんが、札幌の子どもたちのために、またひとつ新しい動きを始めるかもしれない。いいな。
□現実の壁はとっても大きいだろうけれど、この先もしかしたら起るかもしれない事態をあれこれ妄想・夢想するだけでも、ワクワクと幸せな気分になる。
□夕方、そんな温かな気持ちを胸に、妻と子どもたちのまつ自宅へ車を走らせた。