ツアー記その1 12月5日から11日までのこと

先日の関西/四国ツアーのことを何回かに分けて書こう。
■5日(土)
苫小牧から深夜発のフェリーで敦賀へ向かうはずだったが、午前中にフェリー会社から電話。海が時化たため、予定した便は欠航とのこと。予定を早め、19時30分発の別便に乗船。しかし、揺れた揺れた。思い出したくもないくらい、揺れた…。
■6日(日)
ずっと船中。ああ、揺れた…。で、本州上陸後は、大津近くで車中泊。揺れないのって、幸せ。
■7日(月)
朝、京都南区へ。今回のツアーのお仕事ひとつめは、久世西小学校でのスライド上映講演。
昨年・今年と京都に来るたびにお世話になっている「この本だいすきの会」のOさんが仲立ちをしてくれて実現した。富山から同会のMさんもわざわざ駆けつけてくれ参加してくれた。
教頭先生、校長先生と短く歓談をしたあと、会場の体育館へ。京都も12月に入って冷え込んできたようで、広い体育館にはすーっと冷たい空気が。板敷きの床に直に座った子どもたちに申し訳ないなぁ…と思いながら、1時間ほど講話。でも、子どもたちはじっと写真を観、話に耳を傾けてくれた。ありがとう!
午後はOさんとともに町内の公民館に移動し、若いおかあさん方と「写真絵本作りワークショップ」。短い時間だったけれど、とても素敵な、母親ならではの優しさに満ちた手作り絵本がたくさんできました!
終了後、そのまま残れる方々と一緒に会場で鍋。熱々のカレーちゃんこの美味しいこと!お宿は会場近くのDさんのお宅にお世話に。暖かな布団と心遣いがまた嬉しい。
■8日(火)
大阪へ。万博公園にある大阪国際児童文学館へ。今月27日で閉館になることが決まったこの施設で、館内の様子や貴重な蔵書を撮影することになったのだ。
旅の前、いつもお世話になっている鎌倉の絵本作家Nさんに今回のツアーのことをお知らせしたところ、「せっかく関西へ行かれるなら、ちょっとお願いしたいことが…」とメールを頂いた。
聞けば、Nさんが理事を務める同館は、(ごく簡単に言えば)橋下大阪府知事が進める政策のなかで「不要」と判断されたそう。で、各方面から大々的に反対の声が数多くあがるも、大阪府議会で決まってしまった「廃止」決議は覆らず。
そんな事情があり、Nさんに「もし大阪で時間があれば、小寺さん、何か文学館でできないかしら…時間がもうないので…」と声をかけていただいたというわけ。
多くの人に惜しまれながら閉館することになったこの館のために、何ができるだろう。僕にできるのは、撮影と、条件が整えばワークショップか…。
ということで、関西滞在中に時間が取れそうな8日に施設や資料を記録に残す撮影を、そして11日には地元の読書推進グループ「大阪子ども文庫連絡会」のメンバーの皆さんとメモリアル写真撮影ワークショップを行うことになった。
8日は朝から館の職員Dさんの案内で館内をまわり、撮影。
閲覧室の豊富な蔵書や、来館者への心遣いに富み、工夫が凝らされた展示。それら“表から見える部分”ももちろんなのだが、バックヤードの閉架に収められた貴重資料の質と量、そしてそれらを地道に収集・研究してきた専門職員らスタッフたちの働きぶりなどを見るにつけ、「財政が逼迫しているから」「費用対効果が…」という言い分をもってしてここに積み上げられてきた分厚い実績と”計り難い存在の価値”をガラガラと崩してしまうのは、「ああ、なんともったいないことか…」と、腹立たしいような、嘆かわしいような気持ちになった。
限られた時間のなかでの撮影だったので、必ずしも「撮りきった!」と胸を張れるような撮影内容ではなかった(もとより草や木を撮るしか能のない僕だ…建築や本等のブツ撮りをホイホイと器用にこなせる訳も無く…)。
しかし、こうしたタイミングで大阪を訪れることになり、自分の職能を通じて(悔しくも)閉館間近となった施設と向き合えたということは、じつに貴重な経験となった。状況にふさわしいことばではないかもしれないが、心から「こうした機会を与えてもらって、良かった…」と思えた。
撮影後、大阪在住の友人の写真家A氏の家に転がり込む。前日までハワイ取材に出かけていて、たいそう忙しい身であるにも関わらず、じつに快くお宿と歓談のときを提供してくれたA氏に感謝!A氏夫妻の手作り料理に舌鼓を打ちながら、互いの近況報告などをしつつ楽しい夜がふけていった。
■9日(水)
朝はゆっくりと起き、A氏が淹れてくれたハワイ産の美味しい珈琲を頂く。
昼は西宮在住の友人Hと、A氏宅の近くのカレー屋で久々の再開。ご主人が事故で入院中だというのに、時間を割いて駆けつけてくれた。ありがとよ!
午後、奈良の書店「新風堂」さんへ。今日は店主Nさんの息子でマリンバ奏者のBくんのホームコンサートがあるという。
今年の3月にBくんと初めて会い話をしてから、僕は彼の演奏が聴きたくて聴きたくて仕方なかった。「マレットで鍵盤を叩いた後の、消えていく音を大事にしたいんです…」と静かに語るBくん。そのときは武満徹の話で夜遅くまで話し合ったっけ。
なんという偶然か、今回僕が関西に滞在している間にコンサートが行われる。これは聴きにいかない訳にはいかない。大喜びで参加させてもらうことにした。
しかし、ここで大チョンボ。事前に会場の場所(京都市内)と開演時刻の連絡をもらっていたにも関わらず、僕の全くの思い込みで、無意識のうちに僕は車を奈良へ向けて走らせてしまった…。
新風堂さんの近くまで来て、ようやく「え、違うじゃん!奈良じゃない、京都だよ!」と自分の誤りに気づく。それから大急ぎで京都の会場に向かうも、残念なことに、到着したときには既に1曲目が始まってしまっていた…。ああ、アホやなぁ、俺…。恥ずかしいのと、申し訳ないのと…。
Bくん、今度はちゃんと平常心のベストの状態で演奏を聴かせていただきます。今回は本当にごめんなさい!
コンサート終了後は、コンサートの主催者で音楽家一家のTさんファミリー、Bくん、共演者の方々らと歓談。Tさんからは「今度京都に来られるときは、ぜひ生演奏と写真上映のコラボレーションやりませんか」と嬉しいご提案を頂く。5月にまた関西には来るので、そのときに是非!
夜も更けたので、Tさん宅をあとにし、奈良・新風堂さんへ。店主Nさんご夫妻と歓談。6月には新風堂主催で谷川俊太郎講演会を行うのだとか。聴きたいな…。
Nさんおすすめの日本酒をちびちびやりながら、詩のこと、写真のこと。
■10日(木)
朝、新風堂さんとの別れ際、お店にあった「エルマーすごろく」をお土産に購入。帰ったら子どもたちとやろう。
昼すこし前に京都・桂離宮の近くの児童書専門店「えほん館」へ。今日午後は、店主のHさんがアレンジしてくれて、地元桂川小学校でスライド上映講演。3年生担当のM先生の尽力で実現した。嬉しい。
7日の久世西小に引き続き、子どもたちはとっても良く話を聞いてくれた。講演後には、鹿の角などに触ってもらう「お楽しみタイム」も。子どもたち、楽しそう!僕も楽しい!
この講演には、地域で長く読み聴かせ活動をされているO先生、また、久世西小のPTAのOさん、Kさんも参加してくれた。みなさん、有り難うございました!
えほん館Hさんと再会を誓いながら別れ、夕方は向日市のBook&Cafe「Wonderland」さんへ。店主Hさんと珈琲を飲みながら歓談。ほんとは今回のツアーでWonderlandさんでも写真展示やサイン会などもしたかったのだけれど、今回は他に仕事を詰め込みすぎてしまいその余裕がなくなってしまった…。次に来るときは、ぜひ!
■11日(金)
朝から大阪国際児童文学館へ。午前中は再度閉架の撮影。明治や大正時代の希少本などの資料をたくさん見せていただく。その装丁や仕上げの丁寧さ、美しさ。職員のDさんと「昔の子どもの本の作り手が子どもたちのことをとても大切に考えていたことがよくわかりますよね!」と話しながら、蔵書と向き合う。
午後は、館存続のために尽力し奔走した大阪子ども文庫連絡会(大子連)の方々10数名と一緒に館内を歩き、デジカメで「心に残る文学館の風景」を皆で撮影。それをすぐにプリントアウトし、パネルに貼付けて「メモリアル写真パネル」を作った。
各々の視点で見つめた文学館。それら数十枚(百枚くらいはあったかな?)の写真に、今回はコメントもつけてもらった。それぞれの風景や、館に寄せる思いを。
大子連の皆さんが書くコメントの一つ一つからは、館へのたっぷりとした愛着が伺える。そして、くすっと笑ってしまうようなユーモアも。
しかし、それに対して僕が「さすが笑いの本場・関西の皆さんですね!」と言ったとき、大子連のどなたかがぽつりと漏らされた「だって、笑ってでもいないとやってられないし…」ということばに、僕はこの”閉館”がもつ意味の大きさを改めて感じ、襟を正さざるを得なかった。
大子連の皆さんの作業はまだ続いていたが、僕は次の仕事の地・高松へ移動を開始しなければならず、後ろ髪引かれながら皆さんに別れを告げ、15時頃、館を後にした。
高松には19時頃に着いた。翌日12日に行われるワークショップを主催してくれた「子育てネットひまわり」代表のAさんとひまわりメンバー、そしてそれぞれのご家族とで和気あいあいと会食。
その会場は、ひまわりの活動拠点がある仏生山という地域にある温泉、その名も「仏生山温泉」のレストラン。しかし、この温泉が、なんとも素敵!ぜひネットで検索してほしい。お近くの方はいってみてもらいたい。”温泉”の概念が吹き飛びます。
温泉オーナーのOさんにも同席頂いて美味しい夕食を頂いた。翌日のワークショップが楽しみだ。
…つづく