不都合な真実

■さっき、映画「不都合な真実」を観てきた。正直な感想を書こう。
■終始、政治臭、プロパガンダ臭のする映画だった。正直、もしこの作品を純粋に「映画」として捉えるならば、僕はあまり良い評価をしたくない。
■根底に流れる「善悪二元論」「ヒロイズム」「(ご都合主義的な)家族愛と愛国主義」「コマーシャリズム(コンピューターA社)」、またアジアへの「悪気は無いが根強い蔑視」が感じられて、公に向けられたドキュメンタリー映画と謳われているこの映画を観ながら、なんだかハリウッド制作の劇映画でも見ているような気分になってしまった。
■何より、ゴア氏を正当化する目的で、感情操作、また情報操作を意図するかのようなシーンがところどころ挿入されているのに参った。テーマそのものは大事なのに、それを扱う手法を見ているだけで、なんだか鼻をつまみたくなってしまった。
■僕が今アメリカという国に抱いてしまっている「偏見」に照らせば、ある意味では、アメリカのアメリカらしさを存分に感じさせてくれる映画ではあったと思う。
■そうは言いつつ、決して「見る価値の無い映画」だとは思わない。むしろ見る価値はある。
■この映画が発する政治臭や、(あくまでも僕の偏見に基づくところの)アメリカ臭の’良し悪し’や’好き嫌い’を超越して、この映画が切り口としている「地球温暖化」を代表とする環境問題は、やはりつまるところ極めて「政治的な問題」なのだということを、この作品を観ることで僕は再認識した。その意味で、僕にとっては少なからず勉強になったし、刺激になった。
■やはり、環境問題は、政治問題なのだ。ん、当たり前か。
(まぁ、この映画の政治臭うんぬんに関しては、そもそも、多分ゴアさん本人は、この映画を敢えて政治的なものとして作ったのだろうから、それについて賛否を云々してもしょうがない。政治家である自分をメインキャストに据えたうえで、映画の最後では「この温暖化問題に対処するに相応しい政治家に票を投じましょう」とはっきり言っているのだから。)
■僕はこの映画を観て、やはり政治や政治的なものや動きと自らとの関わりを今一度しっかり見つめ直すべきだなぁと思った。それはもちろん、この映画の中でゴアさんが発したメッセージをどう判断し、この映画自体をどう受け取るかも含めてのことだ。
■ある「権威」から提示されたものを受け取るときに危険なのは、手に取り易い場所にしつらえられた美味しそうな果実をのみ、ぱくりと鵜呑みしてしまうこと。それが明らかに「善きこと」「良き物」「正義」と思えても、まずは一旦立ち止まって、自分の身体感覚でそれを吟味・検証する作業が、いま、絶対的に必要に思える。
■それは、その果実が美味しいそうなときにのみ気をつけていればいいのではない。「良薬口に苦し」を真に受けて、こんなに苦い薬を飲んだのだからひとまず安心!というのもまた危ない。その苦い薬の主原料は、じつはただの小麦粉だったりする(遺伝子組み替え輸入小麦だったらなおイヤだな…)。
■それをちゃんと踏まえた上で、僕は自分の身体感覚をできる限り稼動させて、「気候が今までにないスピードで変動している」という異変を知らせる情報に、冷静に向き合っていかなくてはならないと思わされた。
■身体感覚ということに関しては、幸い僕には、近隣の新得町や道南・大沼で農業をやりながらまさに自分の身体と知恵を頼りに生き方を切り拓こうとしている友人、諸先輩、知人が何人もいる。つい先日も道南でそのうちの1家族の世話になってきたばかりだ。それら「地に生きる人達」と今後もしっかりつながりを持ち続けることもまた、僕には大事なことなのだろうと思う。
■個人的には、環境問題とは、企業・業界に物申せない政治体制、その政治体制に物申せないマスメディア、そこから流されてくる「問題解決には個々人のモラル向上と日々の取り組みが大切です」という、もっともらしくはあるが解決への本気が全然見えない上滑りなキャッチフレーズ、そのそれぞれとどう決別し、またそれら相互の関係を自分のものとしてどう再構築するか。まずはそこに問題解決の糸口がある、と思っている。
■日記の冒頭ではこの映画について「映画としては良い評価をしたくない」と書いたが、温暖化について知らなかった情報をいくつか知り、また温暖化ということを切り口にして「やはり、まずは政治とマスコミ・マスメディアをなんとかしなくてはな…」と改めて思わされたという意味では、見て良い作品だったといえるかもしれない。後者に関しては、かなり反面教師的な意味合いも含まれてはいるけれど…。
■最後に、この映画のアカデミー賞受賞やゴア氏のノーベル平和賞受賞、また9.11事件やアフガン/イラク戦争というものを背景におきながらこの映画のワンシーン、ワンシーンを思い浮かべるときに湧き上がったもう一つの感想を書いておこう。
■それは「アメリカ、そしてアメリカ的社会の病巣は想像した以上に深いな…」ということ。
■「不都合な真実」の書籍版のほうはどうなのかな?