加藤多一・森にいます

北海道新聞朝刊の生活面には、毎週土曜日に掲載される「親子で楽しむ・北の童話」というコーナーがある。道内縁の作家による短編童話が8週に渡り連載される。
いま連載中なのは「森にいます」。加藤多一著。今日で4回目。で、この連載が、良い。
北の森で暮らすポンコというどさんこ馬と、ポンコをとりまく木々や動物、森羅万象とのささやかな交流を淡々と描いたおはなしだ。余分な飾りの無いすっきりとした文体と優しい言葉で綴られた、誰もが読める児童文学だ。
しかし、毎回僕はこれを読むたびに、その淡々とした物語の中で、なにかこう、ヒリヒリと胸を炙るられるような、背中をピシャリと打たるような、曰く言い難い感覚・感慨を覚える。というのも、加藤氏の放つ言葉が、随所で、えらく「切れる」のだ。
それは言葉の一語一語や物語エピソードの裏に込められた作者の「批判精神」の切れの良さゆえに他ならない(そこには多分に自己批判が含まれているように感じられる)。
この物語の舞台となりまた作者自身が在住する「北海道」と呼ばれる土地が本来一体どういう土地であるのか。ヒトという生き物がどういうものであるのか。歴史というものがどういうものであるのか。そして、この現代がどういう時代であり、また、現代に生きるという事がどういうことなのか。
それらに向けられる作者の鋭い視線と思いが、平易ながらもじつに切れ味の良い言葉として、スパン!スパン!と物語の随所に織り込まれている。
このコーナーの「親子で楽しむ…」というタイトルは、伊達ではない。子どものみならず、親にとっても、大層読み応えがある。いや、むしろ、楽しんだ先のことをこそグッと考えてしまうような、濃密な味わいのある作品であると思う。
僕はこの連載を毎回楽しみにしているが、この4回の間、一度たりともその期待を裏切られた事が無い。18×50L程度の短い物語のどこかで必ず、加藤氏の放つ言葉が僕の胸をツンと突く。
「やっぱり、水は強い。」
今回は、この言葉にやられた。そこには、72歳の作者の、現代に対する冷厳な眼差しだけでなく、未来への希望が託されているように思えた。そして、この言葉に身をもって応えねばならない僕ら若い世代の責任のようなものすら、感じてしまった。
道新購読者には、ぜひ読まれることをお勧めしたい。