南相馬2

前回の日記内容と話が前後するが、南相馬の町の状況やそれに対して思うことを、僕が知り得、感じ得た範囲で書いておきたい。
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前回の日記にも書いたが、鹿島区のボランティアセンター(VC)には、僕が参加した2日間に関しては、概ね50名ほどのボランティア(ボラ)が集まっていた。
僕はあいにく避難所の中まで様子を見ることができなかったのだけれど、もしかしたら、VCに朝9時に集合している人たち以外にも、別途避難所などで対応にあたっているボラがいたのかもしれない。
いずれにしても、海岸沿いの津波被害の甚大さを目の当たりにした後では、前回の日記の冒頭に書いた通り、ボラ人員の頭数がこの程度では「どうしようもない」と思わずにいられない。
ただ、どうしようもない人数不足のなかで今後どうしようもなく大変な長期戦になることは分かっていても、いまできることをコツコツと積み上げていくしかない。
ここに来るまでは、たった2日間しか滞在できない自分など「無力」だと思っていた。しかしそれは違う。全くの微力であることには違いないが、決して「無力ではない」。
被災地には、たくさんの人手が、働く人間が必要だ。たとえ参加できるのがわずか数日でも。
災害発生から1ヶ月半も経ってようやく現地にはいった僕が偉そうに言うようなことではないのだけれど、できればより多くの人が現地に足を運ぶようになるといいなぁ…と実感する。
ただ、どんな支援を行うか、またどこの被災地で支援を行うかについては、いうまでもないことだけれど、あくまでも個々人の判断に委ねたい。
特に、東京電力福島第一発電所に比較的近い地域での作業については、放射線被曝に関して様々な情報を自分自身で吟味・判断し、決断する必要がある。
そこに生きる地元の方たちのことを思うと極力使いたくない言葉ではあり申し訳ない気持ちになるが、つまり「リスクは自分で負う」という決意がもとめられる。
僕は、各種メディアや福島在住の知人など様々な情報源から得た情報を元に、実測放射線量、自分が従事する作業の内容と滞在時間、いわゆる「暫定基準値」などの数字を照らし合わせた。
たとえば…
福島県ホームページ/環境放射能測定結果・検査結果関連情報
そのうえで、いわば「ただちに健康上に影響が出るレベルでは無いだろう」と自分で思えたし、また今後においても健康上憂慮すべき影響は(僕にとっては)ないだろうと思えたので、南相馬市鹿島区での屋外作業に従事することを選んだ(もちろん、余計な被曝を極力避けるための対策や工夫は、自分にできる範囲で行った上でのことだが。)
なにより、郡山の知人から聞いた情報のうち南相馬が抱える「人手不足」という問題に対してなにかしたい、という思いがあった。
また仮に、わずかな時間の中でごくささやかな援助しかできなくとも、南相馬のような状況におかれた地域とそこで生きる人たちに、ひとときでも出会っておきたいと思った。
よく知られているように、「南相馬」もしくは「福島」に関しては明らかに行き過ぎといえる排斥的差別行動が顕在化しているそうだ。
「福島ナンバーの車というだけで県外で車をボコボコにされて”原発”とスプレー書きされた、というエピソードは、たんなる噂ではなく本当なんですよ」と地元の人が話していた。
また、ほかのある人はいま南相馬がおかれている現状について憤慨しながら次のようにいった。
「南相馬市には、原発からの距離が20km圏内の警戒区域にかかる地域もあるが、30km圏外の地域もある。鹿島区は30km圏の外側にある地域。しかし、マスメディアが流すのは”南相馬市はどこも一緒で、危ない”というイメージだ。
また、ネット上のうわさ話で「南相馬はすでにゴーストタウンと化している」というのを私たちも見ている。ご覧いただいてお分かりのとおり、実際には店も開いているし、住民だって普段通り生活しているのに…。
そんな情報ばかりがながれるから、この鹿島区にも外部から人が寄り付かなくなってしまった。ただ、最近になって、ボランティアなどで南相馬に実際に来た人がツイッターなどで正確な情報を流してくれるようになって、少しずつ人も寄り付くようになってきてはいるのが救いだ」。
南相馬市・桜井市長が「これは兵糧攻めだ。このままでは南相馬市民は飢え死にする」と叫びをあげた当初の状況よりは、いまは事態は改善され、物流も回復を見せ始めて入るようだ。実際に町を南北に貫くメインストリート(国道6号線)を走っていると、既にいくつもの店舗が営業を再開していて、ガソリンにしろ食料品にしろ比較的潤沢に物資は行き届いているように見えた。
(ちなみに、僕は南相馬滞在中、VCから車で数キロ程度の距離にある「道の駅そうま」の駐車場に寝泊まりをしていた。トイレや水回りなどは全く問題ないので、いつもの本州出張の時と同じように、快適に夜を過ごせた(現在道の駅店舗部門の営業は休業中)。
その近くにあるコンビニ2件は、24時間営業ではないかもしれないが、品揃えなどは通常に近い状態で営業している。朝の通勤時間帯には、被災現場へ向かう各種作業員たちが多数来店して弁当や飲物、たばこなどを買っていた。誤解を恐れずにいえば、”特需”ともいえる大繁盛だ(大手コンビ二というのがもったいないが…)。
お腹がぺこぺこになれば、車を少し走らせれば「震災支援特価・カレーライス350円!」というレストランがあったり、「醤油ラーメン500円・ご飯1杯無料・キムチ食べ放題」というラーメン屋もある。実際、ラーメン屋は、大変世話になった。
国道6号線の車通りは多い。自衛隊車両や建築関係の大型トレーラー、土木業者のライトバンなども多いが、もちろん福島ナンバーの地元の人たちの日常の行き来がたくさんある。鹿島区から原町区中心市街地にかけての国道沿いは、ゴーストタウンなどとは全くほど遠い。)
いわゆる「風評被害」が南相馬にはある。それに困惑している現地の人びとがいる。ただでさえ困っている人をさらに追いつめる「風評」には、直接的な当事者ではない僕ですら腹が立つ。
しかしその一方で忘れてはいけないのは、吹けば飛ぶような嘘偽りの「風評被害」のさらに向こう側には、厳然とした事実としての重たい「原発被害」の「実害」があるということだ。
根拠の不確かな風評は、丁寧に排除すればいずれ消え去るだろうが、東電原発事故が南相馬市のみならず周辺各地に直に与えた”具体的ダメージ”は、依然看過してはならないと僕自身は考えている。それはそれらの地域に居る人間、訪れる人間たちにとって先述したように「リスク」として変わらず在りつづける。
東京電力が管理する原子力発電所が事故により生じさせてしまった問題は、ヒステリックに過剰反応すべきではないが、しかし逆に、根拠に基づかない情報を元にしてその全てを「風評、風評」と軽んじて看過してしまってはいけないと感じる。
「風評被害」という言葉を隠れ蓑にして、本来向き合うべき「原発被害=東京電力原子力発電所の事故がもたらした実被害」から目をそらすべきではない。
回りくどい書き方になったが、南相馬に限らず東電福島第一原発周辺の被災地に赴く際には自分自身のリスク判断のもとで、とあらためて書いておこう。
その上で僕は、やはり言いたい。
もし状況が許すならば、一人でも多くの人にぜひとも南相馬市の被災に関わってもらいたい。
自分自身で情報を整理し、もしもリスクを感じたとすればそのリスクを自分で背負いきれる範囲内の関わり方で、短時間でも構わないので、できれば現地に足を実際に運んでいただけるのなら、彼の地のひとたちは大変喜ぶだろう。
とにかく、人手が必要だ。
○問い合わせ
南相馬市鹿島区・鹿島区災害ボランティアセンター
http://ameblo.jp/minamisoma-svc/entry-10863071696.html

電話:0244-46-5354
地図:
http://www.mapfan.com/index.cgi?MAP=E140.57.52.2N37.42.19.0&ZM=11

(つづく)