春の雷

昨日まで阿寒のオンネトー近辺へ撮影に出ていた。
大分春めいてきたとはいえ、森の中にはまだ雪がたんまりと残っていた。しかし、もう十分ツボ足で歩けるカタ雪だ。ところどころ顔を覗かせたミズバショウガかわいらしい。
撮影3日目は夜から雷雨。野中温泉の駐車場に停めた車中で寝袋にくるまっていると、窓の外が時折ピカッと光る。稲光だ。雷鳴が雌阿寒岳山麓にとどろいている。
と、一際眩しい閃光が差し込んできて、一瞬目がくらんだ。そして、間髪あけずに「ドドーン!」ともの凄い地響きを感じた。近くに落ちたのだ。
大気が震えているのか、それとも地面が震えているのか。車体をとおして落雷の衝撃が伝わってくる。びりびりと振るえるような細かな揺れがなかなか納まらない。実際にはほんの2~3秒程度の時間だったのだろうけれど、とても長い間揺れていたように感じられた。正直、ぞっとした。
雷は怖い。たかが大気中の静電気の放電現象。しかし、なんという強いエネルギーだ。
今回は、たとえば登山中に雷雲に包まれるといったような切迫する状況では全くなかった。逃げ場のない山上とは異なり、近くには森があり、高い木がいくらでも生えている。そもそも車の中にいれば、ひとまずは安心だ。でも、あの音と振動のもの凄さには、そんな理屈を越えたところで底知れぬ恐怖を覚えた。
翌日は、不安定な天気が継続し、森には一日中霧が立ち込め、そのわりには風も強く、気温はとても低かった。保温ナイロンの長袖山シャツを重ね着し、その上にフリースジャケットと厚手のアノラックを重ねても、まだ寒い。指先だけ出せるように改良した手袋をはいて撮影したのだが、カメラの金属部に触れる指先がたちまち凍えそうになった。長靴の中の指先が、さっきからジンジンと痛い。
ふとシラカバのこずえを見上げれば、強風が吹きつけた雨粒が凍り付いて霧氷のようになっている。今朝方は氷点下だったということだ。
5月ももう半ば、暦のうえでは立夏も過ぎた。本州ではとうに桜も終わり、それどころか、沖縄では梅雨入りの話題まで出始める頃。そんなときに、僕は寒さに背中を丸めながら、はぁっと白い息を吐いている。
北海道の自然に向き合っているのだという実感と、この厳しい自然の中に息づく生き物たちの逞しさを感じずにはおれない数日間だった。