講演と打ち合わせと物思う峠道

昨日、今日と札幌へ行ってきた。
昨日は夕方から、Tさんと会う。昨年春に亡くなったTさんのお連れ合いの「一周忌記念展示会&コンサート」の打ち合わせ。札幌市内のギャラリーで、Tさん夫妻に縁のある写真家、絵描き、音楽家が作品や演奏を持ち寄って、故人を偲ぶ。僕も写真を展示させてもらう事になった。
Tさん(亡くなった方)は生前、札幌で喫茶店をしていて、僕は本当に彼女の世話になった。何度も店で写真展を開いてもらった。しかし、初めての著作を彼女に見せることはできず、それは僕にとって大きな悔いとなっている。
できれば彼女が生きているうちに作品を見せたかった。最近の新作も、直に彼女に見せたかった。しかし、いまはどうあがいても彼女が再び目の前に現れる事は無い(夢の中以外では)。それはどうしようもない事だ。
でもせめて、彼女との思い出を共有できる人達との集いの場で、ひとりひとりが持ち寄る思い出によって紡ぎだされてくるTさん面影に向かい「お蔭様で、なんとか頑張っていますよ」と報告をしたいものだと思っている。
記念展示&コンサートは、3/29の一日限り。札幌市旭ヶ丘「ギャラリー門馬」。参加は自由。
さて今日は、朝から「冒険クラブ」という子供たちの団体の活動終了式にお呼ばれし、スライド上映講演をしてきた。普段から自然体験をたっぷりしている子供たちだけあって、森の動物の写真などにビンビンと反応が返ってきて、とっても楽しかった。
ただ、会場が広い体育館だったこと、また、子供たちの年齢が、下は3歳から上は小学3年生までと幅があったことをもう少し考慮して話の内容を絞るべきだった。雰囲気が少し散漫になってしまった感が否めない。反省。
午後は打ち合わせが2つ。
一つ目は、六本木に3/30グランドオープンする複合施設「東京ミッドタウン」のテナント「shu sanctuary」のオープニングイベントに提供する映像作品の引渡し。今回この企画のオファーをくれたプロダクションのH氏が東京から来てくれた。
まだ若い方なのだが、これまで手掛けられた仕事の内容などを伺うと、しっかり仕事をされる方だという印象。僕の作品をこのHPなどで見つけて連絡をくれたそうなのだが、こうした出会いをいただけるとは、ありがたいことだ。
東京ミッドタウン
http://www.tokyo-midtown.com/japanese/
shu sanctuary
http://www.shusanctuary.com/
華々しいオープニングセレモニーに自分の作品を使ってもらえるのは、大変光栄な事。この映像を用いたイベント演出を、僕の東京方面の知り合いにもぜひ見てもらいたいのだけれど、このオープニングイベントに参加できるのは招待客とメディアだけなのだ。残念…。
Hさんとの打ち合わせの後は、市内白石区で絵本読み聞かせや文庫活動をされているTさんのお宅へ。Tさんが主催する「絵本コミュニティKURABU」には、つい先週催された会の勉強会にお呼ばれしてスライド上映と「森のいのち」の話をしてきた。
今回の打ち合わせは、Tさんが進めている札幌市内の小学校での読み聞かせ活動の今後の展開を一緒に考えるというもの。Tさんと、今の教育現場や子供たちが置かれている状況などについて話しながら、「いまこそ、”自分で聴く力”、”読み取る力”を大切に育てたいですね」と意見が一致。本当にそうだ。戦争反対。
すっかり暗くなったので、Tさん宅を後にして、一路自宅へ。通いなれたいつもの峠道をドライブしながら、ぼんやりと、あれこれ考える。今の仕事のこと、今後の仕事のこと。特に、2冊目の本のこと。そして、やっぱり家族のこと。
どう生きるか、ということに関しては、写真家という生き方を選んだ時点から常に自分への問いかけを繰り返した。しかし、いまこそ特にそれを強く意識している。もっと肩の力を抜いて淡々としていればいいのだと頭では思いながらも、いや、そうもいっていられないのだ、と言う自分もいる。
雪降りしきる峠道で、いつもより10km/hおそいスピードで車を走らせながら、いろいろと考えた。
そう、僕の車はそもそもが非力な軽自動車だから、札幌のからの帰路はいつも、たっぷりものを考える時間がある。こんなときにはつくづく、遅い車に乗るというのはなかなかいいものだな、と思う。そして、そんなことも含めて、生き方というものを考えて見たりする。
こうして3月半ばにしんしんと雪の降る北海道に住んでいる事とか、十勝という田舎に住んでいることとか、ちっとももうからない仕事を選んでしまったこととか、そういえば大きな組織というものから久しく遠ざかっているなぁ、なんてこととか――。そんなよしなし事をあれこれ考えていたら、いつのまにか、すっかり峠を下りきってしまっていた。
自宅に着いてみると、娘達は当然ながら布団の中で寝息を立てていた。居間の机の上には、長女が今日作ったという紙粘土人形がころりと転がっていた。長女の大好きなピンク色で塗られた、にっこり微笑む動物の像。
この長い耳は、どうやらウサギのつもりだな…。なかなか可愛く作れたじゃないか、と思わず笑みがこぼれる。でもそれといっしょに、なんだか胸がきゅーっと切なくなってしまい、困った。