HEATWAVE

なんという偶然。夢のような時間。
高知での3泊目。西鉄インにチェックインしたのが19時過ぎ。腹が減ったので、飯でも喰おうとはりまや橋のあたりをふらふらとしていると、遠くからドラムとベースの重低音と、歌声。
ロックだ。かなり骨太の。
しかし…この声…聞き覚えがある。しかも、大好きな、あのシンガーの声。
急いで音の鳴る方、声の呼ぶ方へと走る、走る。
中央公園の特設ステージ。「高知街ららら音楽祭」スペシャル屋外ライブ。
スポットライトの中で汗みどろになって歌っていたのは、ああ、やはり、山口洋。そう、大好きなロックバンド、HEATWAVEだった。
今年3月11日以来、僕は、ことあるごとに、彼らの演奏する「満月の夕」を頭の中で何度も繰り返しリプレイしてきた。
いや、その曲に限らず、時折彼らの歌を思い出しては、口ずさんできた。
弱さの中で、痛みの中で、でも、強く生きること。弱さと矛盾を抱えているからこそ、悩みながらでも、真っ直ぐに生きること。
僕は、ソングライター山口洋が綴る歌が、歌声が、大好き。
その彼に、彼のライブパフォーマンスに、まさか、ここで、出会えるとは――。
いてもたっても居られず、ステージ前に走りより、彼らの弾き出すビートとことばに揺さぶられるうち、いつしか僕も、すっかり汗みどろ。
しかし、なんと気持ちのよく、自らの心にすら染み入ってくるような心地よい汗か。
ライブの最終盤、アンコールに応えて再びステージに現れた山口洋が、聴衆への謝辞に併せて、最後に言った。
「こんな時代だからこそ、ちゃんと生きていこう。オレが言いたいのは、それだけ。」
そして彼らは、高知の夜空を見上げながら、強く強く、遠くとおく、「満月の夕」を歌い上げた。
僕にとり、ああ、何という偶然。夢のような時間。至福、とはこのことか。
一時間以上経ったいまでもまだ、夢の中に居るみたい。