不定期日記

立松和平x横松心平『振り返れば私が、そして父がいる』(随想舎)

札幌在住の作家・横松心平さんが、父である作家、故・立松和平氏のエッセイを引き継ぐ(受け繋ぐ)形で綴られた著書、『振り返れば私が、そして父がいる』(随想舎)。
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https://www.amazon.co.jp/dp/4887483279/ref=cm_sw_r_cp_ep_dp_7PbWybJ73AY76

昨年末から手元にあったのですが、ようやく、ようやく、読了。もとより寡読かつ遅読なぼくが、『アンナ・カレーニナ』と『森の生活=ウォールデン』という壮大な寄り道を経てしまったが故に、読み終えるのにこんなにも時間を要してしまいました…。
本書の第一部は、2010年に和平氏が急逝される直前まで和平氏が綴った自分史エッセイ、そして第二部は、和平氏の逝去後に息子・心平氏が綴った「父・自分・父と自分」についてのエッセイ。
心平氏が明かす父子関係における葛藤、死別の受容、それを経ての関係の捉え直し、心情の変容の様を読むにつけ、心平さんと全くの同世代人であり、またやはりちょうど同じ時期に父を病で失っているぼくにとっては、本書で描かれていることは全く他人事には思えませんでした。ぼくの父が立松和平さんのような著名人でも作家でも無かったという圧倒的な差異は別にして。
「親と子」という、じつに意味深くまたある種不可思議なつながりの中で、「子」である者がいかにその縁を自分の“生”の中に自覚的に引き受けていくのか。心平さんの心の変遷に共感を覚えながら、興味深く読みました。
ただ、そうした「親と子の話」という切り口以上に、じつのところは、ぼくには「作家が作家と成り、また作家で在るということ」の一つのリアリティが生々しく描かれているように思え、それにより大きな興味をそそられました。
いや、より正確には、作家という「属性名」を消し去ったところに残る、なにかをして生きる人の「成る」と「在る」の姿が見えて、面白かったし、大変刺激を受けました。
和平さんが遺した作品、そして心平さんがこれから作り上げていく作品をぜひ拝見したいと思わされました。
そして、自分自身「ぼくもやっぱり、あの作品はしっかり作り上げなければな」と、現在棚上げ中の企画を再度あたためようという気持ちになりました。