アニメ映画『千と千尋の神隠し』を観ました。好きな映画です。
いろいろなシーンが印象に残っているのですが、
いまは特に、カオナシという化け物(?)が主人公の千尋に語りかけるあるシーンが思い出されます。
以下、ネタバレです。
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油屋で働く千尋に関心をもったカオナシは、千尋に近づきたいと思ったのか、油屋にこっそり忍び込みます。
しかし、自分のことばを持たない化け物(?)であるカオナシは、千尋に語りかけることができません。
そこでカオナシは、自分の掌からいくらでも無尽蔵に創出できる「まやかしの金粒」で
油屋の従業員の一人をおびき寄せると、彼をパクリと一口に飲み込んで、彼の声色を獲得します。
(のちの描写を見ると、食われた本人は、カオナシにまんまと取り込まれてしまったという
我が身の状況を自分ではよく理解していないようです)
借り物の言葉で人に語りかけることを可能にしたカオナシは、
まやかしの金粒をあちこちにばら撒きながら
「俺はお大臣さまだ、接待しろ、食べ物を持ってこい、ひたすら俺に尽くせ」とばかりに、
油屋の者達を右に左に自分のいいように動かします。
いくらでも湧き出してくる金粒にすっかり目を眩まされた従業員達は、
やんやとカオナシを持ち上げて、ドンチャンドンチャン、右往左往のお祭り騒ぎの狂乱に興じます。
カオナシは、どんどんと運び込まれるご馳走をかたっぱしから腹の中に溜め混んで、
ぶくぶくぶくぶくと肥え太っていきます。
しかし、千尋はその狂乱に乗ろうとしない。
本来千尋に興味を持ったからこそ油屋に忍び込んだカオナシは、それが悔しいのか、
ついに千尋を直接呼び出すと、なんとか千尋の関心をかおうと、
その鼻面にあふれんばかりの金粒を差し出しながら、最初は穏やかに、
しかし最後には千尋を恫喝するかのように、次のように語りかけます。
「欲しがれ。」
このシーン、ものすごく印象的で、僕にとってはこの映画のクライマックスとも言える場面です。
それが、ことあるごとに思い出されます。そのすごい迫力に、ぞぞっとします。
ちなみにこの後、カオナシは自分のいるべき場所を見つけてすっかり落ち着き、
一時は我を忘れた油屋の従業員達もすっかり平静を取り戻します。
カオナシの腹の中に取り込まれた者達も、カオナシにペッと吐き出された後、みんな元気です。
狂乱はあっというまに過ぎ去るのでした。
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僕がこの映画を最後に見たのは、何年前だったでしょうか。忘れました。