不定期日記

待っていたもの

「そろそろ起きなさい」と言われなくても娘たちが勝手に起きてくる日は、年間に数日しかない。
今日はその日。
居間のベンチの上に二つ並んだギフトバッグをいち早く見つけた次女が
「きたー!おとーちゃん、きたよー!」と、いつもの朝より数倍高い声で、僕を起こす。
ささやかな願いだけれど、願い続け、待ち続けていたものが、届いたのだ。
ちゃんと手元に。
僕は「ああ、よかったね、それはよかった…」と相槌を打ちながら、
寝床を出て、新聞を取りに外へ出る。
外は、すっきり晴れて、どこまでも透明な朝。
スパッと切れるような、グイグイ四肢を締め付けるような、この季節らしい冷気。
こういう時には、すーっと鼻から息を吸ってみる。
瞬時に鼻毛がぱりぱり凍りつくのがわかる。
マイナス15度くらいにはなっているだろう。
「うう、寒い寒い…ああ、嫌だ嫌だ…」とつぶやきながらも、顔はなぜだかニヤけてしまう、そんな朝だ。
家族そろってゆったりと朝食をとった後、新聞に目を通す。
一面は「道内50年ぶりの大雪」。
ここ数日の大雪で、北海道内の交通網がひどいことになっているらしい。
僕の親戚家族も、昨日新千歳に飛行機が降りられず、帯広空港で一時待ちぼうけを食った。
レジャーの人も、仕事の人も、交通機関で働いている人も、本当にご苦労様だ。
他にも、この季節らしい紙面がいろいろ。
12面、日曜書評は、レギュラー評者がこの年のベストスリーを選ぶ年末恒例の特集。
16面、スピードスケート全道大会は地元白樺高と南商が優勝か。相変わらず強いな。
23面、ああ、道新が毎年この時期に行っている「サンタ追跡企画」のファンタジー記事だ。和む。
と、27面まできて、ある記事にひたと目が止まる。
ほんの27行の、紙面の一番したにひっそり書かれた、いわゆるベタ記事だ。
「■5年9ヶ月ぶりに遺骨」
福島県大熊町の瓦礫の中から9日に見つかった遺骨が、
東日本震災当時7歳の女の子のものであることが判明したという報告記事。
父親(51)による「娘からクリスマスプレゼントを受け取った気がする」という言葉。
そして「娘はなぜ6年近くも待ち続けなければならなかったのか。
(原発)事故がなければもっと早く見つけてあげられた」という言葉が添えられていた。
ほんの27行のベタ記事が、今朝は、他のどんな記事よりも胸にこたえた。