参った。発売初日から。

コープさっぽろの事業でお世話になっているKさんの事務所を訪ね、そのお隣のEzo Rock事務所を訪ね、そのあと白石でいつも世話になっているT山さん宅で新刊のお披露目と押し売りトーク(?)をし、先ほど自宅へ戻りました。ふう。楽しい札幌滞在でした。

さて、昨日のえほんやひだまりでのことを、もう一つ書きましょう。またしても、すごく長い文章になりますけれど。

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ひだまりでのサイン会とミニトークには、札幌在住の絵本作家Kさんも駆けつけてくれました。小学生の息子さんと一緒に。サッカー少年団の試合の帰りにわざわざ寄ってくれたそう。嬉しいなぁ…涙。

ちなみに、ぼくとKさんは同い年。同じ担当編集者に世話になっているということもあって、時々札幌で会ってはお互い「がんばろうねー!いい本作ろうねー!」と励まし合っている仲です。

そんなKさん親子ほか数名のお客様を前に、ぼくはまず「いろいろはっぱ」を読み、そのあと、出版にまつわる“秘話”や、登場する葉っぱたちに関するちょっとマニアックな裏話など、あれこれおしゃべりをしました。

そのなかで、本に登場する「ミヤコザサ」という笹の葉の話題になりました。

ミヤコザサ自体は北海道ではたいして珍しくもない笹です。姿形も、いわゆるフツーの笹の葉です。

でも、本書で紹介するミヤコザサは、ちょっと特殊な、ある“不可思議な状態”で写真に収められ、掲載されています。

(自然散策好きの方ならたぶんよくご存知の、いわば「自然観察あるある」の一つとも言える、あの状態です。「なになに?気になる…」という方は、ぜひ本をお読みくださいね。えほんやひだまりに売ってます。笑)

で、その“不可思議さ”の理由をみなさんに種明かし。それは、笹の葉がまだ若い時に起こる、とある自然のイタズラが原因です。

そのことを口頭でお伝えしたところ、すばらしいことに、ひだまり店主の青田さんがとっさに機転を利かせてくれました。

青田さん、さっと店外に出ていったかと思うと、庭の片隅に生えていたという笹の、ちょうど頃合いの良い若葉を一本採ってきてくれたのです!

そうそう、まさにこんな頃合いの若葉の時に、あることが起こると、結果、本書の写真のようになるのです。

本で紹介されている“不可思議な状態”そのものではないものの、現物を手にとって見れば一目瞭然です。みなさん「なるほど! コレがこうなっているときにアレがああなったら、うん、確かにソウなるよねー!」と、大いに納得でした。ありがとう、青田さん。

で、そのあと一通りトークを終えてサイン会に移行。サイン会の後はみなさんと車座になっておしゃべりを楽しみました。

ん…? あれ…?

気がつけば、Kさんの息子くんがいません。さっきまで部屋の中にいて、一緒に話を聞いていたはずなのに。いったいどこにいったのでしょう。

もしかして、はっぱのお話、全然おもしろくなくて飽きちゃったのかな……。ぼくはちょっと不安に。

と、店の玄関ががちゃりと開いて、息子くんが外から店内に入ってきました。どうやらお庭にいたようです。

息子くん、手に何かを持っています。

あっっっ! 

笹の葉です。しかもそれは、まさにあの“ちょっと不思議な状態”そのものの、本に載っているのとよく似た様子の笹の葉ではないですか!

それを見たみなさんもぼくも青田さんも、「あーー! これだ! “本物”だ!」。

息子くん、探してきてくれたのです。見つけてきてくれたのです。自ら「葉っぱのある“現場”」へおもむき、笹叢をかき分けて探し、見つけ、自分の手で手折り、そうして手に入れた“本物”を、(そして「自ら見つけ出した」という“経験”を)、そこにいるみんなと分かち合うために、持って帰ってきてくれたのです。

やあ、もう、ぼくは、嬉しくてたまりませんでした。本当に。

だって、こういうことが起こるためにこそ、この本を作ったのですから。

至福とは、作者冥利につきるとは、ああ、このことです。発売初日から。

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本当に、子どもたちはすごいなぁ、と思います。手放しの“無条件かつ絶対的な子ども礼賛”は、ぼくはどうにも気持ち悪く思えて、そんなことしたくないと思ってはいるのですが、それでもやっぱり、すごいものはすごい。

一冊の書物や講話の中に何かを見出し、それに触発され(または、それに関して先駆的な行動をとった他の人間<=青田さん>の行為に触発され)、自らの身体を使ってそのことに直接的に関わって行く。その行動の素早さ、軽やかさ、シンプルな的確さ。

ぼく自身も含め、ついつい何でもさらっと見聞きしただけ、情報に触れただけで(いや、あえて「タッチしただけ」と言っておきましょうか)、あたかも“知ったつもり”、“解ったつもり”、“向き合えたつもり”になってしまいがちなオトナに比して、ここで息子くんが見せてくれた速やかかつ無駄のない「身体運動を伴う“現実化力”」。

これです、失わせてはいけないのは。奪ってはいけないのは。

いいものを見せてもらいました。本当にありがたい。

うーん、もしかしたら息子くん、優れた絵本作家Kを親に持つという“宿命”ゆえに、じつはもう最初から、この「葉っぱの写真絵本」を作ったおっちゃんが何を一番よろこぶのか、そして、何を為したくてこの絵本を成したのか、ちゃーんとお見通しだったのかもしれませんね。

参った。発売初日から。笑