5日に行われた中頓別での写真絵本作りWSについて、もう一つだけ書いておきましょう。低学年女子のHちゃんの作品のことです。
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「読んだ人が“自然っていいね!”と思える本を作ろうね」という僕からの呼びかけに応え、参加してくれた15名の子どもたち(+2人の大学生)は、じつに多様な切り口で、それぞれにすばらしい作品を創作してくれました。
そのほとんどは、花や草木や虫や川など「自然物そのもの」を被写体にしたものでした。
でも、Hちゃんはちょっと違いました。撮影タイムが始まってから彼女が一心にカメラで追い求めたのは、なんと「道」でした。
撮影フィールドである「鍾乳洞公園」内の遊歩道や木道、階段、小川に架かった小さな木橋など、ひたすら人の歩む道ばかりを写真に収めてゆくHちゃん。
他の参加者が色あざやかなお花を見つけて喜んでいようが、トンボが上手に撮れたと歓声をあげていようが、お構いなし。終始「わたしはもう撮るもの決まってるから」と。
その作品。最初のページには何気ない遊歩道の写真が一枚貼られ、そこに読者を森の散策へ誘うような言葉が添えられています。そこから読者は、Hちゃんに促されるままに森の中の「道」を歩いて行くことになります。
と、物語の中盤、薄暗い木立の中で「道」が不意に二手に分かれます(木道の分岐の写真が貼られています)。
その一本は、左手の方へ直角に折れ、すぐに写真の枠外へと消えてしまう道。
もう一本は、木立の中を右前方へ向けてまっすぐに進んでゆき、遠近法で言うところの消失点へと延びてゆく道です。そして、ちょうど消失点に近い部分で薄暗い木立が途切れ、その先の「道」はハイライトに輝いています。
そんな写真にHちゃん、次のような言葉を添えました(うろ覚えで正確な文言ではないかもしれませんが…)。
「どっちへいこうかな。よし、あかるいほうへいこう」。
そしてこの「道」の物語は、最終的に、この分岐における選択の通りに、明るく幸せで楽しい森歩きの経験として終わってゆくのでした。
まさに、読後感として誰もが「森歩きっていいね!」、つまりは「自然っていいね!」と思わずにおれないエンディングです。
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うーーーーーーーーん……。
ぼくは本当に不思議なのです。そして、あっけにとられてしまいます。
一体どのようにすれば、こんなにもシンプルに、こんなにもケレン無く、こんなにも素直に、こんなにも気持ちよく、1人の人間の意思がまっすぐに貫かれ、かつそれが他者に対してもちゃんと説得力をもった形で結実し、しかもその奥底にポジティブな「生」の真理らしきものさえもが潜んでる–––––などということが可能なのでしょう。
もうね、Hちゃん、撮影者としても、語り手としても、あんたすごいよ。
そんなHちゃんに、この48歳オッサンからお願いだ。
物事の複雑さを言い訳や隠れ蓑にし、ケレン味で身を処すことばかりを覚え、素直であることを怖がり遠ざけ、あげく、自分の内や外に気持ち良さを醸すことがちっともできなくなってしまったこの哀れなオッサン社会に、どうぞHちゃん、あなたの力で明るい光を灯しておくれ。
そして導いておくれよ、われらオッサンを、あかるいほうへ。「道を歩んでいくって、いいね!」って、みんなで確かめ合えるように。
このままだと、どうやら、また道を踏み間違えちゃいそうなんだ(一部のオッサンたちについては、わざと道を踏み間違えようとしている節もあるんだけれど……)。